herstory
〜 憧れ 〜
彼女は頻繁に憧れていた。
あるときは母に、あるときは友に、あるときは先生に、あるときは先輩に。
どうしたらその人のようになれるのかな。
どうしたら同じことができるようになるのかな。
観察し、話を聞き、本を読み、練習し、失敗し、情報を集め、推理し…
コンプレックスの塊だった彼女が、
少しづつ憧れの人との距離を縮めていった。
距離が近づけば憧れの人の興味を彼女に惹きつけることができた。
そしてそれが嬉しくて彼女はまた努力する。
あるとき、「彼女に憧れる」という存在が現れた。
自分が憧れるのには慣れている彼女はとまどった。
そしてその存在に興味を持ち、彼女は気づいた。
彼女に憧れるという存在の方が、彼女よりも優れた面を持っていることに。
彼女は焦った。
このままでは失望させてしまう!
大人になって振り返る時、あの時なぜ不安や嫉妬よりも
失望させてはいけないという思いが存在したのか彼女は不思議に思う。
きっとその時、年長者に憧れてばかりだった彼女の中に
初めて先輩としての自覚が目覚めていたのだろう。
それは彼女が将来大事にするプロ意識の素となる。
それからの彼女は努力を惜しまなかった。
その姿が運命の女神の心を動かしたのであろう。
当初予定されていなかったにもかかわらず、
いくつかの現実が修正され、
彼女は高校・大学においてgirl conductorとなった。