herstory
〜 大学寮 〜
彼女は大学時代親元を離れて寮に入った。
荷物を入れるために初めて足を踏み入れたとき、
狭さ、きたなさ、暗さ、ほこりっぽさ、彼女は新しい生活に対しての不安でいっぱいになったが、
4人部屋でたまたま3人が1回生だったこともあり、すぐに寮生活になれることができた。
その部屋にはたまたまテレビを持っている人がいなかったため、1年間テレビのない生活を送った。
テレビがない分、勉強をする時間、楽譜研究する時間、音楽を聞く時間、本や漫画を読む時間はたっぷりあった。
1月17日の早朝、どーんという大きな揺れに4人は起こされた。
恐くて布団から出ることができなかったが、それでも話し相手がいることで気は静まった。
4人同居は着替えるとき、電話をするとき、友達を部屋に呼ぶとき、いろいろ気を使うこともあったが、
部屋のメンバーに恵まれたことで、寮生活は毎日が修学旅行のような感じでとても楽しかった。
2年目には4回生が卒業したので後輩Kが部屋に入ってきた。
Kとは趣味が合ったので、大学卒業後も親しく付き合うことになった。
寮生活でたくさんの先輩・友人・後輩ができた。
出身の違う人と生活することで言葉、習慣、県民性の違いを知った。
3年目にくじを引き当て、新しくできたばかりの一人部屋の寮に移ることができた。
6畳のなかにユニットバスと机とベッドが備え付けてある部屋でとても圧迫感のある部屋だったが、
初めての一人暮らしは誰にもなんにも気を使わなくてよい自由な生活だった。
また、ここでの生活のおかげで、その後どんな部屋でも広く幸せに感じた。
たまに寂しさに襲われるときもあったが、そんなときは同じ寮に仲間がいることがありがたかった。
長期休暇時に帰省して親元に帰ったとき、食事の後にお茶が出てきた。
食事を作ってもらうこと、何も言わなくてもお茶が出てくることに感動した。
親のありがたみを感じ「ありがとう」といったら、母は驚いた。
最初娘を家から出すことに諸手を上げての賛成はしていなかったが、
寮生活で彼女が得たものの多さと彼女の変化を、母も認めずにはいられなかった。