herstory
〜 笑顔 〜
肉食獣の目は顔の正面についている。
獲物を逃さず狙うために。
肉食獣同士が視線をぶつけた時、とてつもない緊張感を生む。
先に目をそらしたほうが負け。
次の瞬間には命はない。
彼女は研修の仕事で笑顔の大切さを伝えたい時、よくこの話をする。
「二人組みになって、となりの人と10秒間みつめあってください。
絶対に目をそらさないでください。目をそらしたほうが負けです。」
この10秒の長いこと。
ある組は途中で笑いが止まらず、まともに相手をみることができない。
ある組は目をカッと見開き、相手を威圧しながらにらめっこしている。
ある組はどんどん体が後ろに反っていき、緊張感に体が耐えられない状況にある。
カウント10が終わった瞬間、まず全員がどっと笑う。
「みなさん!いま笑いましたね!!
これは皆さんが相手の方と友好な関係でいたいと思っている証拠です。」
人前で話をする時、緊張状態にある時、
おかしくもないのに顔が自然と笑ってしまうことがある。
それは緊張に耐えられなくなった体が、自己防衛のために顔を笑わせるのだ。
笑い顔は相手に「自分は敵ではない」という合図を送る。
そしてその笑顔が聞き手の緊張を和らげる。
このことは人間関係を円滑にしたい時に非常に使える。
人間に与えられた神からのプレゼント。
人がみな、この力をうまく使いこなせることを願って、今日も彼女は笑顔を向ける。