herstory
〜 コーラス 〜
彼女の合唱との出会いは中学1年の4月。
新入生のためのクラブ紹介で、合唱部のステージはもともと歌が好きだった彼女の心を惹きつけた。
迷うことなく合唱部に入部し、ぴかぴかの楽譜をもらうと家に持ち帰ってずっと寝るまで眺めていた。
もともと地声が低めの彼女はメゾソプラノのパートに入った。
今まで小学校の音楽の授業でも主旋律しか歌ったことのなかった彼女にとって
ハーモニーを作り出すメゾは、歌の楽しさからさらに「合唱の面白さ」を見出すきっかけとなった。
NHK合唱コンクールに向けて毎日練習に励む彼女であったが、
1年生の夏休みに親の転勤が決まり、新潟から熊本に引っ越すことになった。
熊本の中学に入ってまず最初に担任に聞いたことは合唱部の存在。
ここでも彼女は合唱を続けることができた。
人数の少なかったコーラス部では声が大きいという理由でソプラノのパートに入った。
負けず嫌いで自分に厳しい彼女は、授業が終わるとまっすぐに音楽室へ向かって
練習が始まるまで発声練習をし、少しでも高音が出せるよう腹筋とのどを鍛えた。
練習が終わってからも見回りの先生に怒られるまで残って練習して歌いつづけた。
こうして彼女は才能を努力でカバーすることに成功した。
他のメンバーは小学校からコーラスをしている人が多く、そのうち遅くまでみんなが残って歌うのが日課になった。
飽きることなく練習した甲斐あって、彼女のコーラス部は1月の県の合唱コンクールで最優秀の賞をもらった。
賞をもらったことが練習をさらに活き活きとさせた。
しかし何よりも熱くまぶしくライトで照らされたホールのステージで、たくさんの聴衆に聴いてもらい、
演奏終了後に割れんばかりの拍手をもらった経験が何よりも彼女達の心の支えとなった。
またステージで歌いたい!
この思いが高校、大学でも合唱を続ける原動力となった。
演奏についての考えは人それぞれ違うだろうが、
彼女は「自分がどう歌うか」よりも「聞き手に歌がどのように聞こえるように歌うか」を考えた。
また、目から飛び込む印象を考えて歌の表現だけでなく、顔の表情の研究をした。
これがconductorとして歌い手を盛り上げたり、声を引き出すためのテクニックにつながった。
そして、彼女が社会人となって営業の仕事をしたり、研修や講演をする際にも生かされた。