herstory
〜 クリスマス 〜
大学3回の冬、音楽部にあるバイトが紹介された。
それはクリスマスシーズンにあるホテルのレストランで
聖歌隊としてクリスマスソングを歌いにいくというものであった。
1日2回、各10分くらい歌うだけで、
お金とホテルの豪華食事付きという非常に割の良いバイトであった。
毎日10名集まればよかったので、
都合のいい日のみいけばよいという気楽さも非常にありがたかった。
音楽部のステージコートは白のブラウスに緑のスカート。
クリスマスシーズンにちょうどぴったりであった。
「ジングルベル」「赤鼻のトナカイ」「We wish you a merry christmas!」といった
有名なクリスマスソングを集め、楽譜の表紙に赤い画用紙を貼り付ける。
赤と緑がそろい、見た目もクリスマスっぽくなり、
歌うほうもとても楽しかった。
12月20日から25日までの5日間のシフト組みがなされた。
10人が集まらなければ誰かに応援を頼まなくてはいけない。
それぞれ行ける日を書いた紙を集計してみると、
幸い、どの日も定員数分人が集まることになった。
ん?
12月24日も25日もしっかり10名集まっていた。
そして彼女は24日も25日もOKで出していた。
このシフト組みで部内で誰に彼氏がいるか、いないかが一発でばれることになった。
こうしてうれしいたのしいクリスマス、
幸せそうなカップル、子ども連れの家族、熟年夫婦達のために
彼女達は毎日クリスマスソングを捧げた。
このバイトはホテル側にとっても、割安な予算で雰囲気をかもしだせて良かったのか、
次の年にも依頼がきた。
大学4回生となっていた彼女にも後輩から依頼がきて、
その年も24日、25日に歌いに行くことになった。
なぜ彼女に後輩からご指名がくるのか、ちょっと考えながらも。