herstory
〜 まねる 〜
彼女は食べるのが非常に遅かった。
学校の給食を時間内に食べることができず、
掃除の時間になって、机を全部後ろに下げている時でも
一人で給食の残りを食べていることは日常茶飯事であった。
周りの人たちが掃除を始めている中、
一人給食を食べることはとても苦痛であった。
先生に注意されることも多く、
彼女は給食の時間が嫌いだった。
ある時、彼女は食べるのが早い女の子と同じ班になった。
彼女は思いつきで、密かにその子の食べ方のまねをしてみた。
かむ速さ、次の食べ物へうつるタイミング、食べ物を口に運ぶ速さ、
すべてが今までの彼女の食べ方とは違っていた。
最初からペースにすべてついていけた訳ではなかったが、
それでも彼女はいつもより格段に早く給食を食べ終えた。
それから、給食の時間に楽しみができた。
数日間、いろんな人の食べ方のまねをしてみて
彼女はなぜ自分が食べるのが遅かったのか、原因を発見した。
それは三角食べをしていても、次の食べ物へうつるまでに時間がかかっていることであった。
彼女は口の中のものがすべてなくなってから次の食べ物にうつっていたが、
食べるのが早い子たちは、次々に食事を進めていた。
原因がわかれば、直すのはたやすかった。
彼女は次第に食べ終わるのがクラスでも早いほうになり、
好きなおかずをおかわりに行くくらいになった。
まねることはまなぶことにつながる。
彼女はコンプレックスをひとつ、解消することに成功した。