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〜 目標 〜



  大学の心理学の実験で目標値の設定についての実験があった。
  内田クレペリンテストという一桁の数字が横にずらっと並んでいるテストを使用。
  クレペリンテストは、隣り合った2つの数字を足した答えの1の位の数字を、できるだけ早く多く書いていくテストである。

  実験の方法は、
  まず1分間、テストの足し算を早く正確にしていく。
  時間が来たら、いくつ計算をすることができたかを記録する。
  次にその数を参考にして、次はどれくらい計算できそうかという予想量を記録する。
  そして2回目も同じように1分間足し算をし、計算できた数とその結果による満足度(不満、普通、満足)を記録する。
  その後、次はどれくらい計算できそうかという予想量を記録して、3回目の計算をし、数と満足度を記録する。
  この試行をくり返し10回行う。

  この実験は、
  作業の成功(前回よりも解ける数が増えること)や失敗が次の予想に与える影響、
  作業の成功や失敗と満足度の関係、
  次の予想の立て方の個人差をみるものである。

  彼女は常に次の予想を前回結果よりも少し高めに立てるタイプであった。
  1分間に80コ解けたら、次の予想は82コ。2回目85コ解けたら、次の予想は88コという具合に。
  彼女は「予想」を「目標」として位置付けていた。
  内田クレペリンテストの面白いところは、回数をこなせば解ける数が必ずしも上がるというわけではない。
  途中で疲れたり、集中力を欠いた瞬間に6+8の計算に1秒以上かかってしまったりして、急に前回よりも5コ以上解けなくなることもある。
  前回の結果より1つでも少ない結果の時、彼女は「不満」とし、同じで「普通」、目標達成したら「満足」という満足度を出した。
  10回の試行の間、毎回結果が上り調子というわけではなかったが、1回目と10回目を比較すると10コ以上解ける数が上がっていた。

  心理専攻生の8割が違う予想の立て方をしていた。
  1分間に80コ解けたら、次の予想も80コというように、解いた実績以上の数字を予想に上げることはなかった。
  そのパターンのグループは前回と同じ数字、つまり目標達成したら「満足」なので、彼女と比較すると「不満」「普通」が少ない結果となった。
  そのかわり1回目と10回目を比較した時に、彼女を含む2割の「目標高め設置グループ」の方が高い伸び率をマークした。

  彼女はその実験の報告を聞いて驚いた。
  予想(目標)は高めに立てるのが当たり前と思っていたので、同じ数字や前回よりも低い目標を立てるということは思い浮かびもしなかった。
  そして「現状維持」「目標低め設定」グループの方が多いということがなかなか信じられなかった。
  このとき彼女は自分と同じ価値観でない人がいること、違う価値観の人のほうが多いかもしれないことを知る。
  尚、「目標高め設置グループ」の共通点は、気が強く、負けず嫌い、努力家、プライド高いことであった。
  


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