herstory
〜 プレゼント 〜
彼女はだれかにプレゼントを贈ることが好きだった。
デパートやおもちゃやさんにいって、自分も欲しいもの、相手の喜びそうなものを選び、
渡したときにどんな顔をするかを想像することはとても楽しかった。
彼女はけっしてお金持ちではなかった上に、おこづかいで本を買うことが多かったため、
プレゼントの予算はあまり高くはなかった。
それでも心をこめたメッセージカードをつけて、少しでも相手に喜んでもらうようにした。
子どもの頃はみんなが同じような状況だったので、プレゼントの金額は問題にならなかったが、
大人になるとそういうわけではなかった。
彼女の中では「贈る行為」「贈る気持ち」が一番だったが、
それは必ずしも相手に通用するとは限らなかった。
相手のことを思って考えて贈ったものが、実は相手の期待以下で不満だけが残ったことがわかった時、
「いっそ贈らないほうが良かったのか?!」と、彼女はとても傷ついた。
逆に何回か、高価なものでももらってあまりうれしくないという経験を彼女はした。
ただ贈り主がお祝いの気持ちで贈ってくれたことはわかっていた。
あまり好きでない人、親しくない人から自分の予想以上の高価なものをもらったことで、
その人に借りをつくったような気分になり、気が重くなった。
好きな人からはもらったものはどんなものでも嬉しく、大切にした。
ただでさえ物持ちの良い彼女は、好きな人からのプレゼントは大事に大事に使った。
言葉や気持ちをもらった時、その喜びは一生彼女の頭と心に残って消えないものとなった。
価値観の違う相手、価値観がわからない相手と物を贈りあう難しさを彼女は知った。
相手との関係でプレゼントの受け取る意識が違うこともわかった。
自分が好かれているかどうかで、相手の喜んでくれる度合いも違うことに気づいた。
結局、普段の人間関係作りが一番大事なことであった。