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〜 リズム読み 〜



  楽譜をもらって最初の練習は、リズムにあわせてまず言葉を読むことから始まる。
  プロの集団ではないので、最初からいきなり楽譜をみて歌える人は少ない。
  そこでまず、音程をつけずにただ音符の長さにあわせて棒読みをする。
  四分音符や八分音符ばかりの単純なリズムの時はすぐに音をつけて歌うこともできるが、
  最近の曲は複雑なリズムのものが多い。
  言葉をつけるのも難しい場合は「タンタン」「タタタ」「ラララ」などでリズムを読んでいく。

  たいていの人が最初につまずくのが三連符。
  これは四分音符(音符1拍分)を3つに刻むものである。
  メトロノームやパートリーダーが打つ拍子に合わせてパートごとにリズムの練習をするのだが、
  すぐには全員がすらすらリズム読みできるわけではない。
  何度練習してもなかなか全員のリズムがそろわないとパートリーダーもだんだん疲れてくる。
  曲から離れて三連符の集中練習に入る。
  それができるようになると三連符と八分音符の連続くり返し練習。

  「いこま いこま なーらー なーらー いこま いこま なーらー なーらー…」
  身近な地名で(とてもローカルなので関西の人しかわからないであろう)
  リズムをお経のように唱える。
  傍できいているとかなりあぶない集団だが、本人たちは至って真面目なのである。

  だんだんできてくると調子に乗って、1拍を4つや5つに刻みたくなる。
  「なーらー いこま つるはし さいだいじ なーらー いこま…」
  (恐らく近鉄奈良線を知っている人以外にはまったくわからないであろう)
  こうしてキーボードを囲んだ数人の集団はまるで何かの宗教のように
  それぞれひざをパンパン叩きながらなにやらぶつぶつ唱えるのであった。

  あるとき、他の大学の団と合同練習をした時、
  そこで彼女たちは驚いた。
  「ぶーたー こぶた ぶーたー こぶた ぶたぶた ぶたこぶた」
  ひざを打つ音にあわせて、あやしげな声が聞こえてきたからだ。
  どこの団でもリズム読みの方法は似たようなものだと思った。
  けれどもその言葉で団の特徴がわかる気がした。



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