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〜 作詞作曲 〜



  初めて歌を作ったのは4歳の時
  ロックンロール調の曲だった。
  「アルミたけし思い出の歌」
  幼稚園児ならではのわけわからん歌詞だったが、
  弟へ捧げた歌だった。

  両親が「この子は天才だ!」と感激した歌を作ったのは6歳の時
  演歌調で、盛り上がった後、余韻を残す曲だった。
  「黄色いかさ」
  相変わらず意味不明な部分の多い歌詞だったが、
  親へ捧げた歌だった。

  いとこの学校の宿題のために歌を作ったのは8歳の時
  昼休みの歯磨き運動のための曲だった。
  「はみがきサンバ!」
  全然サンバになっていないいいかげんさが我ながらおかしかった。
  結局その曲がどんな評価だったのか、知らない。

  その後彼女は学校でいろんなことを学んだ。
  正しい表現、正しい言葉、正しい文法、正しい文章。
  彼女は自分の歌がとても恥ずかしく思えた。
  彼女はもう自由な詩が浮かばなくなった。
  枠にきっちりおさまるようになった彼女は
  間違えもしなかったが、新しいものも生み出さなくなってしまった。
  天才少女はわずか4年でその看板を下ろした。



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